COM-1-16
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 TEC-0-1-43 

 問題40 














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【補足説明欄】

2行目の「TEC-0-1-43の場合」とは、TEC-0-1-43-2の条件が成り立つ場合の事です。2016.05.15

2行目の「問題40のような場合」とは、COM-1-13-6〜11に書かれている状況の事です。2016.05.15

3行目について。
「質点の位置エネルギー」という概念は、CAN-1-1-5-27までで解説されています。2016.05.15

6〜14行目では、「質点の位置エネルギー」という概念は誤りであり「質点系の位置関係エネルギー」という概念が正しい、という事が説明されています。
COM-1-13-6〜11に書かれている状況では、COM-1-13-11 の PS を CAN-1-1-15-3 の S だとすると、S以外の実在は存在しないので、
Fi(t) = 0 ∵CAN-1-1-15-12,13
Fi(t) = Fi(ri(t), dri(t)/dt, t) ∵CAN-1-1-15-7
Fi(ri(t), dri(t)/dt, t) = 0 ・・・(1)
である事と、
Fi(r, v, t) = -(Vi)(r) + fi(r, v, t) ∵CAN-1-1-16-6の補足説明の(2)
である事[TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(8)で定義されている]から
Vi(r) = 0 ・・・(2)
と置ける事が分かり、CAN-1-1-16-14〜16 で定義されている「S のポテンシャルエネルギー」は、Sの内力のポテンシャルエネルギー(CAN-1-1-16-14,15への補足説明)に一致します。
TEC-0-1-43-2の条件が成り立つ場合には、Sの内力のポテンシャルエネルギー
U(r1, ・・・, rn) = (1/2)Σi=1nΣk≠iUik(ri, rk) = (1/2)Σi=1nΣk≠iU'ik(ri - rk) ・・・(3)
は「質点系Sの位置関係エネルギー」だ、と考えられます。
その理由は、ri - rk が Pi と Pk の位置関係である事です。
つまり、S を構成する質点が互いにどういう位置関係に在るか、に応じて「S の内力のポテンシャルエネルギー」の値が定まります。
全てのi,k対に対する|ri - rk|の値は全体としてSの形と大きさを表しているから、特に、
Uik(ri, rk) = U'ik(ri - rk) = U''ik(|ri - rk|) ・・・TEC-0-1-43-9
である場合には、S の内力のポテンシャルエネルギーは S の (形, 大きさ) の関数だ、と言えます。
S内の1つの質点たとえば P1 に着目して「P1 の位置エネルギー」という物を考える事は、P1 に働く全ての力の合力
F1(t) + Σk=2nF1k(t) ・・・CAN-1-1-15-12〜14
 = Σk=2nF1k(t) ∵ F1(t) = 0
 = Σk=2nF1k(r1(t), rk(t), dr1(t)/dt, drk(t)/dt, t) ∵CAN-1-1-15-8
 = -Σk=2n(1U1k)(r1(t), rk(t)) ・・・・・(4)
   ∵CAN-1-1-16-2の補足説明の(3)
が、1つのベクトルを変数とする単一の関数Wを使って、
F1(t) + Σk=2nF1k(t) = -(W)(r1(t)) ・・・(5)
という風に表される場合にのみ可能である事が、CAN-1-1-1-11, CAN-1-1-4-4, CAN-1-1-5-17〜21,26,27, TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(9)(※1)から、分かります。
r2(t), ・・・, rn(t) がいずれも t に依存しない定ベクトルである場合には、
W(x) = Σk=2nU1k(x, rk(t)) ・・・(6)
という式で関数Wを定義すれば、
-(W)(x)
 = -x[W(x)] ∵TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(9)(※1)(16a), TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(26)
 = -xΣk=2nU1k(x, rk(t))
 = -Σk=2nx[U1k(x, rk(t))] ∵下の赤枠内の(3a)
 = -Σk=2n(1U1k)(x, rk(t)) ∵TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(14)(16a), TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(26)
∴ -(W)(r1(t)) = -Σk=2n(1U1k)(r1(t), rk(t)) ・・・(7)
だから、(4)(7)から(5)の成立が言えます(※)が、r2(t), ・・・, rn(t) のいずれかが t の変化と共に変化するベクトルである場合には、(5)を成り立たせる関数Wは存在しないので、「P1 の位置エネルギー」という概念は存立し得ません。
「質点の位置エネルギー」という概念は誤っている、と言うのは、この意味においてです。
※の場合でも、「質点の位置エネルギー」という概念を使ってもボロが出ない、というだけであって、「質点の位置エネルギー」という概念が正しいわけではない、という事が、U1k(x, rk(t)) = U'1k(x - rk(t)) が「P1の位置の」ではなく「P1 と Pk の位置関係の」である事から、分かります。
ついでの話ですが、ポテンシャルエネルギーが物体の形に依存する、という主張は、物体を変形するにはその物体に外部から仕事をする必要がある、変形した物体が復元する時にはその物体は外部に仕事をする、という事(外部が存在しない場合には運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和が一定に成る事)を言っているだけの物であり、ある特別な形を持っている物体は変形する事なく外部にエネルギーを放出し続ける、なんてトンデモない事を主張する物ではありません。
その意味で、質点系の内力のポテンシャルエネルギーはその質点系の (形, 大きさ) の関数だ、という学理は、ピラミッドパワーの様な神秘的な力を存在しそうだと考える根拠には成りません。2016.05.15,19,20,27;2019.06.16

17,18行目について。
「分解が一意的ではない」とは、分解の仕方が何通りもある、という意味です。
Fi(r, v, t) = -(Vi)(r) + fi(r, v, t)
ならば、1つのベクトルを変数とする任意の関数Gを使って、
V'i(r) = Vi(r) + G(r)
f'i(r, v, t) = fi(r, v, t) + (G)(r)
と置く事によって、
Fi(r, v, t) = -(V'i)(r) + f'i(r, v, t)
という分解の仕方も可能である事が分かります。
(V'i)(r) = [(Vi + G)](r) ∵TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(1)
 = (Vi + G)(r) ∵下の赤枠内(1a)
 = (Vi)(r) + (G)(r) ∵TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(1)
∴ -(V'i)(r) + f'i(r, v, t)
  = -(Vi)(r) - (G)(r) + fi(r, v, t) + (G)(r)
  = -(Vi)(r) + fi(r, v, t)
したがって、6〜14行目への補足説明中の Vi(r) = 0 は、Vi(r) = 0 and fi(r, v, t) = 0 という十分条件の前半部分だと見なされねばなりません。????.??.??;2016.05.15,19,27;2019.06.16

a, b を実数や複素数とし、f, g を3変数関数とするとき、

[(af + bg)](x, y, z)
 = {(∂/∂x)[(af + bg)(x, y, z)]}i + {(∂/∂y)[(af + bg)(x, y, z)]}j + {(∂/∂z)[(af + bg)(x, y, z)]}k
                                      ∵TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(9)
 = {(∂/∂x)[af(x, y, z) + bg(x, y, z)]}i + {(∂/∂y)[af(x, y, z) + bg(x, y, z)]}j + {(∂/∂z)[af(x, y, z) + bg(x, y, z)]}k
                                            ∵TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(3)
 = a{[(∂/∂x)f(x, y, z)]i + [(∂/∂y)f(x, y, z)]j + [(∂/∂z)f(x, y, z)]k}
  + b{[(∂/∂x)g(x, y, z)]i + [(∂/∂y)g(x, y, z)]j + [(∂/∂z)g(x, y, z)]k}
 = a[(f)(x, y, z)] + b[(g)(x, y, z)] ∵TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(9)
 = [a(f) + b(g)](x, y, z) ∵TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(6)
(af + bg) = a(f) + b(g) ・・・(1)

(1)に a = b = 1 を代入する事によって、
(f + g) = f + g ・・・(1a)
だと分かります。

(1)に g(x, y, z) = 0 を代入する事によって、
(af) = a(f) ・・・(1b)
だと分かります。

a, b が実数や複素数であり、f, g が複数のベクトルを変数とする関数であるならば、

[k(af + bg)](r1, ・・・, rn)
 = {(∂/∂xk)[(af + bg)(r1, ・・・, rn)]}i
   + {(∂/∂yk)[(af + bg)(r1, ・・・, rn)]}j
    + {(∂/∂zk)[(af + bg)(r1, ・・・, rn)]}k ∵TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(14)
 = {(∂/∂xk)[af(r1, ・・・, rn) + bg(r1, ・・・, rn)]}i
   + {(∂/∂yk)[af(r1, ・・・, rn) + bg(r1, ・・・, rn)]}j
    + {(∂/∂zk)[af(r1, ・・・, rn) + bg(r1, ・・・, rn)]}k ∵TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(3)
 = a{[(∂/∂xk)f(r1, ・・・, rn)]i + [(∂/∂yk)f(r1, ・・・, rn)]j + [(∂/∂zk)f(r1, ・・・, rn)]k}
  + b{[(∂/∂xk)g(r1, ・・・, rn)]i + [(∂/∂yk)g(r1, ・・・, rn)]j + [(∂/∂zk)g(r1, ・・・, rn)]k}
 = a[(kf)(r1, ・・・, rn)] + b[(kg)(r1, ・・・, rn)] ∵TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(14)
 = [a(kf) + b(kg)](r1, ・・・, rn) ∵TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(6)
k(af + bg) = a(kf) + b(kg) ・・・(2)

(2)に a = b = 1 を代入する事によって、
k(f + g) = kf + kg ・・・(2a)
だと分かります。

(2)に g(r1, ・・・, rn) = 0 を代入する事によって、
k(af) = a(kf) ・・・(2b)
だと分かります。

x[af(・・・, x, ・・・) + bg(・・・, x, ・・・)]
 = [i(∂/∂x1) + j(∂/∂x2) + k(∂/∂x3)][af(・・・, x, ・・・) + bg(・・・, x, ・・・)]
                       ∵TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(16a)
 = {(∂/∂x1)[af(・・・, x, ・・・) + bg(・・・, x, ・・・)]}i
   + {(∂/∂x2)[af(・・・, x, ・・・) + bg(・・・, x, ・・・)]}j
    + {(∂/∂x3)[af(・・・, x, ・・・) + bg(・・・, x, ・・・)]}k ∵TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(26)
 = a{[(∂/∂x1)f(・・・, x, ・・・)]i + [(∂/∂x2)f(・・・, x, ・・・)]j + [(∂/∂x3)f(・・・, x, ・・・)]k}
   + b{[(∂/∂x1)g(・・・, x, ・・・)]i + [(∂/∂x2)g(・・・, x, ・・・)]j + [(∂/∂x3)g(・・・, x, ・・・)]k}
 = a{[i(∂/∂x1) + j(∂/∂x2) + k(∂/∂x3)][f(・・・, x, ・・・)]}
   + b{[i(∂/∂x1) + j(∂/∂x2) + k(∂/∂x3)][g(・・・, x, ・・・)]} ∵TEC-0-1-40補足説明欄赤枠内(26)
 = a{x[f(・・・, x, ・・・)]} + b{x[g(・・・, x, ・・・)]} ∵TEC-0-1-43補足説明欄赤枠内(16a)
x[af(・・・, x, ・・・) + bg(・・・, x, ・・・)] = a{x[f(・・・, x, ・・・)]} + b{x[g(・・・, x, ・・・)]} ・・・(3)

(3) に a = b = 1 を代入する事によって、
x[f(・・・, x, ・・・) + g(・・・, x, ・・・)] = x[f(・・・, x, ・・・)] + x[g(・・・, x, ・・・)] ・・・(3a)
である事が、分かります。

(3) に g(・・・, x, ・・・) = 0 を代入する事によって、
x[af(・・・, x, ・・・)] = a{x[f(・・・, x, ・・・)]} ・・・(3b)
である事が、分かります。

2016.05.20,27


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【SEOテキスト】03.12.29,宇田雄一,[問題41]TEC-0-1-43の場合、さらに問題40のような場合、第2章の質点の位置エネルギー(CAN-1-1-5)は概念的に誤った概念である。どこが誤っているか。答:「質点の」と考えるのは誤り。「質点系の」と考えなくてはいけない。「位置エネルギー」と考えるのは誤り。「位置関係エネルギー」と考えなくてはいけない。たとえば地面からの高さがhの所にある質点の位置エネルギーはmghである、などと第2章では考えたが、この考え方は正確には誤りで、mghを地球と件の質点より成る系の位置関係エネルギーだ、と考えるのが正しい。hが大きい場合には、このエネルギーをmghで近似する事が出来ない点にも気を付けよう。CAN-1-1-16-6,7,Fiの-∇Viとfiへの分解は一意的ではない事に注意せよ。